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形成外科

リンパ浮腫の治療について(形成外科 浜田裕一医師)

1.リンパ浮腫とは?

 リンパ浮腫は手足がむくむ病気の一つです。各種癌(子宮癌、乳がん、悪性黒色腫、前立腺癌など)の治療(手術や放射線療法など)でリンパ管の障害が起こり、リンパ液の還流が悪くなり発生する(二次性あるいは続発性と呼ばれます)ことが外傷性などを含めると圧倒的に多くみられます。初期は変化が少ないですが、次第に太くなり熱感やだるさがみられたり、蜂窩織炎という組織の炎症・感染を起こしやすくなったりします。リンパ浮腫が進行し組織の変性や線維化が進み皮膚が厚くなってくると最終的には皮膚の過角化をともなった象皮症と呼ばれ、象の皮膚を思わせるような外観を呈するに至ります。

2.治療法の概要

 当科では新しい手術法を行っています。局所麻酔後、良好なリンパ管のある部位に小切開を加え、直径0.5mm前後の細静脈とリンパ管をリンパ液が流れるように数ヶ所で吻合します。術後1~2週より圧迫を開始します。最近の形成外科領域の超微小外科という0.5mm以下までの細い血管吻合を可能とする技術や機器の進歩により開発され、ここ10年以上にわたる経過観察例でも良好な結果が報告されています。しかし現在も多くの施設で「リンパ浮腫は治らない」とか「保存療法をしても浮腫が増大した例にのみ外科療法を行う」という考えが一般的で、医療リンパドレナージを主体とするCDP(複合的理学治療)という保存療法のみ行うことが殆どです。CDPはリンパ管機能やリンパ網がある程度正常に残っていることが前提で、浮腫の進行を遅らせます。時にはリンパの別の通り道が有効になり浮腫の改善することもあります。それに対して私の行っているリンパ管細静脈吻合術ではリンパ網を再建するという考え方(=バイパス手術)です。リンパ管機能が残されている早期に吻合術と圧迫療法を組み合わせることが理にかなっており重要であることはご理解いただけると思います。

3.当科での術後結果など

 リンパ浮腫発生からの経過年数やその程度(病期)により、得られる効果には差があり、全例確実に改善するとはいえませんが、自覚症状改善例も含めると改善度はかなり良好です。著効例(症例1~4など)では四肢周径(太さ)が劇的に減少し、10cmを超える太さの改善をみた症例もあります。また蜂窩織炎が起こりにくく、あるいはおきても早期に治癒するようになります。外からは分からない緊満感(張った感じ)や重さ、だるさの改善もあるようです。高齢者などでは治療後浮腫が改善し、積極的にデイケアでリハビリを行うようになり明るくなった方もいます。若年女性の場合特に精神的な好影響がみられます。これまで浮腫のため控えていた外出やウォーキングやスポーツなどが可能になった方もいます。

症例1症例1

<症例1>上が術前、下が術後

症例2症例2

<症例2>左が術前、右が術後

症例3症例3

<症例3>左が術前、右が術後

症例4症例4

<症例4>左が術前、右が術後

4.新しい取り組み、診断への応用など

 この新しい手術法はここ10年ほどの間に開発進歩してきました。

 私も前任地である愛媛県立中央病院形成外科医長時代より本法に取り組んできました。

 当院に形成外科を開設した5年前からは、さらにICG蛍光リンパ管造影・診断に関する新しい取り組みを続けています。ICGとはインドシアニングリーンという薬剤・色素で1956年以来広く臨床で使用されています。ICGが体内のアルブミンというタンパク質に結合したものに赤外線を照射すると蛍光を発します。この蛍光をCCDで捕らえ映し出すシステムが赤外観察カメラシステム(PDE)です。実際には四肢末梢などで微量皮下注します。皮下注されたICGはリンパ網に取り込まれるためリンパ液中のアルブミンと結合し蛍光を発し、リンパ流の評価をできます。この蛍光は皮下2cm程まで見え、どこにリンパ管があり、どんなリンパ流があるか評価できます。これがICG蛍光リンパ管造影法です。健常な四肢では皮下注後、速やかに線状のリンパ管がみられます。

 しかしリンパ浮腫では①linear(線状)、②plexus/diffuse(網状/びまん性)、③static(静止)の3タイプが観察されます。1) linearは蛍光が線状に観察されますが、リンパ浮腫ではその描出までの時間に遅滞がみられたり、流出速度の低下があります。2) plexus/diffuseはリンパ浮腫に特徴的な像で、リンパ網の皮内、皮下でのネットワークを現しており、dermal backflowと呼ばれるリンパ液の逆流状態も意味しています。3) staticはICG注入後10分以上(場合によっては重症例では数週間)流れがみられないものです。

 当科では手術適応を決定するために従来の診断法に加え、このPDEを用いたICGリンパ管蛍光造影法を利用しています(図1)。さらに手術中、顕微鏡下で従来より高倍率の状態で0.5mm前後のリンパ管の蛍光観察を出来るよう機器開発を試みました。その結果㈱三鷹光器の協力を得て世界初のリンパ管吻合手術中に顕微鏡で光るリンパ管を観察しながら治療できるシステムを開発しました(ICG蛍光顕微鏡観察システム、F-light300)。

 これにより、脂肪組織内に蛍光を発するリンパ管を鏡視下に観察可能となりました。重要なリンパ管周囲の脂肪剥離を最小限とし、手術時間の短縮や精度の向上も得られました。さらにビデオで吻合直後のリンパ流の評価が可能となりました(図2)。手術中に希望される方には映像の供覧も行っています。治療の様子をライブで確認できるのは、大きな安心感を与えているようです。

赤外蛍光カメラ像赤外蛍光カメラ像

<図1>

PDEによるリンパ管蛍光造影像です。正常な方では上の写真のように線状の蛍光が観察できます。しかしリンパ浮腫の方では下の写真のように網目状に広く蛍光が観察され、リンパが滞っていることが分かります。

ICG蛍光顕微鏡 静脈とリンパ管吻合後ICG蛍光顕微鏡 静脈とリンパ管吻合後

<図2>

ICG蛍光顕微鏡観察システム、F-light300による術中写真です。吻合後、右下方のリンパ管から左上方の細静脈へ蛍光を発するリンパ液が流入していることが分かります。また右下方を好く見ると脂肪組織内に剥離されていないリンパ管の蛍光が見えます。

5.最後に

 保存治療は有効で、手術を行っていても補助療法として必要です。しかし保存治療だけにリンパ浮腫進行の運命を委ねず、リンパ管機能が残っている間に是非リンパ管細静脈吻合術と保存療法の組み合わせを行っていただきたいと考えています。県内だけでなく九州地区でもトップクラスの手術機器整備がなされ、実際に多くの治療を行っている当科で相談だけでもしていただければ幸甚です。

webでは、ご紹介不可能な写真、ビデオなどを紹介しながら説明させていただきます。